日本航空が更生計画案を裁判所に提出し再生へと踏み出す
今年1月に法的整理で経営破綻(はたん)した日本航空が、8月31日に更生計画案を裁判所に提出し再生へと踏み出した。計画案には、公的資金の投入や銀行による債権放棄に加え、グループで1万6千人の削減が盛り込まれた。負債を減らし財務内容をきれいにしただけでは再生は遠い。厳しいリストラの中、社員が士気を高め、かつての日航にはびこっていた「甘え」や「おごり」の意識と決別できるかにかかっている。
>>債務・借金に関するブログランキング参加中 ■新たな自覚
「自分にできることは、整備のプロとして安全で安心してもらえる飛行機を送り出すことだけ」
8月にグループの女性整備士で初めて、出発前の中・大型機の最終チェックを行う「ライン確認主任者」に合格したJALエンジニアリングの武藤美希さん(31)。機体に厳しい視線を向け、整備の仕事に没頭する。
最終チェックを終えると、航空日誌にサインし、機長に手渡す。このサインがないと飛行機は飛び立てない。
「もともと機械いじりが好きだった」という武藤さん。夜勤明けや食事中も主任試験の勉強を続け、平成15年の入社から8年目であこがれの資格を手にした。
経営再建に向け人員やコストの削減を進める中、現場にかかる負担や責任が重くなることは避けられないが、万が一にも事故を起こすことは許されない。航空会社にとって、「安全運航」は再建以前の絶対的な条件だ。
「後輩の女性整備士を引っ張っていきたい」。日航グループの女性整備士は約120人。武藤さんは、重責とともに新たな自覚を胸に刻み前を向く。
■信頼を取り戻す
「ありがとうございます。ぜひお持ちください」
8月25日夕刻。まだ日中の熱気が残る東京モノレール浜松町駅(東京都港区)の改札付近で、通行人にグループのパック旅行やキャンペーンを紹介する販売促進のパンフレットを配る日航社員のかけ声が響きわたった。
毎月25日は「ニッコー(日航)の日」。この日は客室乗務員やパイロット、整備士など約35人のグループ社員のほか初めて大西賢社長も加わり、約3千冊のパンフレットを配った。
「信頼を取り戻せるよう、社員一同努力します」。パンフレットには、社員直筆のメッセージカードが添えられている。
参加した地上職の女性社員は「パンフレットを受け取ったお客さんから、逆に『がんばって』と声をかけられたこともある」と、うれしそうに話した。
経営破綻で大きく傷ついたブランドイメージ。ライバル航空会社に流れた顧客も少なくない。
「破綻前は、ナショナル・フラッグ・キャリアとして世界各地に飛行機を飛ばし、利用してもらって当たり前という殿様商売だった。サービスも含め意識が変わってきた」。日航中堅幹部は、信頼回復へ自信を取り戻しつつある。
■コスト意識の浸透
「強烈な意思を持って、誰にも負けない努力をしなさい」。東京都品川区にある日航本社の会議室。穏やかな口調で話す稲盛和夫会長の厳しい言葉に、幹部社員が神妙な顔つきで耳を傾ける。
採算など経営意識を高めるため、6月にスタートした幹部社員教育。稲盛会長の強い要望を受け、課長職以上の約千人すべてを対象に順次行っている。これまでの受講者は約150人。
ある幹部は「企業をいかに発展させていくのかという視点が欠けていた」と、これまでの考えの甘さを自省する。
社員一人一人のコスト意識が高まり、7月には連結営業損益が231億円の黒字を確保するまで収益性は改善してきた。就任当初、「八百屋の経営も無理」と嘆いた稲盛会長も、「意識が変化して、それが業績に表れてきた」と、手応えを感じている。
日本を代表する航空会社としてのおごりがあった-。外部有識者で組織する「コンプライアンス調査委員会」(委員長・才口千春元最高裁判事)は、8月末に公表した報告書で、歴代経営者の危機意識の欠如や判断の誤りを断罪した。
昭和62年に半官半民から完全民営化に移行した後も、業績悪化と救済を繰り返し、「困ったときは国が助けてくれる」という“親方日の丸”の甘えが、社員からも抜けなかった。
公的資金の投入を受ける今回は、再生へのラストチャンス。法的整理という荒療治で、社員の意識は着実に変わってきている。(大柳聡庸、米沢文)
「甘え」「おごり」からの決別 日航再生の現場(Yahoo!ニュースより)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100925-00000588-san-bus_all
2010.09.29 | 自己破産と民事再生情報のランキング | Comments(0) | Trackback(0) | 会社更生法